世界農業遺産(GIAHS)認定に向けて申請しました

最終更新日:2020年8月20日

奥出雲町農業遺産推進協議会 

 令和2年7月22日、世界農業遺産(GIAHS)認定を目指して、「たたら製鉄が生んだ奥出雲の資源循環型農業」と題し、「世界農業遺産への認定申請に係る承認申請書」を農林水産省に提出しました。

 農林水産省の世界農業遺産等専門家会議による一次審査(書類審査)の結果は9月頃に発表され、その後、現地調査と二次審査(プレゼンテーション)を経て、来年2月頃に国内審査における承認地域が発表される予定です。

 国から承認を受けた後、国連食糧農業機関(FAO)へ認定申請をすることとなります。

 

「たたら製鉄が生んだ奥出雲の資源循環型農業」

 たたら製鉄が生んだ棚田の恵み ~仁多米はここにしかない地域の宝~

 中国山地の山々に囲まれた島根県奥出雲町は標高200m~500mに水田が広がる稲作の盛んな町です。9月には、棚田の稲穂が黄金色に色づきます。

 

 奥出雲地域の棚田には、独特の成り立ちがあります。

 733年に編纂された「出雲国風土記」の仁多郡の条には、良質な鉄が生産されていたことが記されており、砂鉄と木炭を原料として日本独自に発達した製鉄技術「たたら製鉄」が行われました。その後、鉄需要の増大から遅くとも17世紀には、山を切り崩し、引いてきた水路に土砂を流し込み、砂鉄を採取する「鉄穴流し(かんなながし)」という採掘技術が発達しました。

 島根県奥出雲町では、日本刀の原料となる「玉鋼(たまはがね)」を生産するため、今日もなお世界で唯一「たたら製鉄」の炎が燃え続けています。

   

 かつて、鉄の原料である「砂鉄」を採取するため、山々を切り崩し、風化花崗岩(真砂土)の中に約1パーセント含まれる砂鉄を冬季の積雪時の豊富な水を利用して取り出しました。この砂鉄を採取した跡地を整備したのが棚田であり、奥出雲の大地には広大な農地が拓かれました。農業用水は、かつて鉄穴流しで使われた水路やため池が再利用され、森のミネラル分を含む清冽な水が棚田へと導かれています。

 また、たたら製鉄の燃料には大量の「木炭」が使用され、森林の中でもクヌギやコナラなど広葉樹を伐って木炭を製造しました。約20~30年周期で輪伐され、萌芽更新による再生により循環的に利用してきました。

  

 このように、砂鉄鉱山跡地を再生した農地と森林資源を土台に、稲作を中心とした農耕と和牛の飼養、林業が有機的に結びつき、人々に恵みをもたらす持続可能な農業システムが構築されました。

 たたら製鉄は、「砂鉄」と「木炭」を安定して供給できたことから操業ができたと言え、「たたら製鉄」で鉄穴流しが行われたことから「棚田」をはじめとする農業基盤が築かれ、風土に適した「稲作」が営まれてきました。

 奥出雲の先人たちは地域の資源をうまく利用し、鉄づくりとともに農林業が一体的に営まれました。こうした歴史的背景から、現在の「仁多米」が育まれているのです。


 

 

たたらの恵み ~鉄づくりとともに育まれた循環型農業~

 奥出雲町が誇る農産品は、たたら製鉄の歴史と深い関係があります。

【仁多米】  

 鉄の原料である砂鉄を採取するため、山を切り崩し鉱山跡地は棚田に再生され、現在、「仁多米」が生産されています。砂鉄を採取した跡地はやせた土地であるため、ソバなどを栽培して土壌を改良し、牛ふん堆肥をまいて地力を上げ良質米を生産しました。

 

【ソバ】   

 「ソバ」は砂鉄採取跡地や森林の伐採跡地などで栽培され、救荒作物として食料を確保してきました。現在は、横田小ソバ、猿政小ソバという在来種が継承され、食文化の「出雲そば」が特産品になっています。

 

【シイタケ】 

 たたら製鉄の燃料に使用する木炭を賄うため、約20年~30年周期で循環的に森林資源を伐採利用してきました。近年は「シイタケ」などのキノコ類の原木供給林として利用されています。

 

【奥出雲和牛】 

 たたら製鉄には多くの役牛が必要とされ、鉄の運搬や農耕のために飼われていましたが、現在は肉用として和牛改良の技術を受け継ぎ、「奥出雲和牛」の産地となっています。

 

 これらの優れた農業システムは、伝統的な知識に基づいた土地利用と棚田景観、文化や生物多様性などの重要性・独自性が認められ、2019年2月、「たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業」として日本農業遺産に認定されました。

 たたら製鉄は鉄を作り出しただけではなく、地域に多くの恵みをもたらし今日の農林畜産業につながっています。

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